「日本語」の「美」(その1)

こんなフレーズからはじめてみます。


「文章を書くのには必ず理由があるものです」(空海、『三教指帰』(さんごうしいき)、冒頭)

「文の起り、必ず由あり」(原文書き下し)


この『三教指帰』、空海の若いときの作品ですけれど、きわめておもしろい。いまの時代のために書いているような部分もあります。
登場人物が、儒教と道教を、それぞれ比較しているんです。そういう意味でこれは台本ですね。そして最後に仏教徒が出てきて、詞を歌うのですが(生死海の賦)、内容にもまして、文章のリズム、律動がきわめて素晴らしいのです。

音読してみるとひときわよくわかります。とても短い本です。
(手に入りやすいのは、角川ソフィア文庫か、中公クラシックスでしょう。下記でテクストを紹介しておきました)。



さて、もうひとつ。



「日々というものは、いままで何千年をも通過してきていて、一年も、それと同様に旅をしています。
船の上で一生を送る人もいますし、馬を引いていつしか年老いてゆく人もいますが、そういう人は、毎日が旅であり、旅に住んでいるのです」
(芭蕉、『おくのほそ道』、冒頭)



あまりにも有名な部分です。


「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。舟の上に生涯をうかべ馬の口をとらえて老をむかふる物は、日々旅にして、旅を栖とす」(岩波文庫版、冒頭)



ここのところ、横書きでタイピングという文章の書き方をしてきました。そしてそのあいだに、だんだんと文章のリズムが知らずに悪くなっていたのです。


以前書いた、演劇、『春琴』をきっかけに、「古い日本語」を音読してみたところ、その音程や、短いフレーズのたたみ込み方にとても驚かされたのです。


(続く)




空海「三教指帰」 (角川ソフィア文庫 358 ビギナーズ日本の思想)

現代語訳が平易。

『三教指帰 』、中公クラシックス、は注が詳細です。

芭蕉 『おくのほそ道―付・曾良旅日記、奥細道菅菰抄』(岩波文庫)

弟子の曾良の日記に加えて、『おくのほそ道』の江戸時代の注釈書付き。この注釈がかなり参考になります。






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この記事へのコメント

きんさん
2008年03月31日 21:23
日本語は、美しいとわたしも思います。
実は、韻とか(気がつかないまま話しているけど)知らない間にいれている文を読むと、
心地いいものです。
田中 公一朗
2008年04月01日 00:35
「日本語」が「美しい」ように、他の言語も「美しい」。日本語だけが美をもつわけではない、という意味で「 」をつけました。

英語でも、ドイツ語でも、広東語でも、アフリカの超マイナー言語でも、スペイン語でも。

また「美」を感じるとはどういうことか、という難しい問題もここにはありますね。

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