文化庁の反論の素朴な間違いを指摘する Errors of Ministry of Culture

朝日新聞のネット版によれば:


 文化庁は27日、世界遺産への登録を目指す平泉(岩手県)が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関から登録延期を勧告されたことに対し、反論を発表した。「平和」と「世界的な意義」に重点を置き、来月2日からカナダ・ケベック市で開かれるユネスコ世界遺産委員会に向けて巻き返しを図る。

 反論の文書では、平泉の価値の基盤とする浄土思想について「平和希求の理念はユネスコ憲章にも通じる」とアピール。仏教によるアジアとの交流や、「金の産地だった奥州はマルコ・ポーロの東方見聞録で黄金の島ジパングと記されたきっかけになり、大航海時代の遠因となったかも」という説も紹介し、世界とのかかわりを強調している。
(以上、6/27/2008より全文)


とのことですが、


文化庁、ちょっと不勉強ではありませんか?

奥州平泉が、13、14世紀に、鎌倉、京都と並んで権勢があったのは日本史上では一致するところでしょう。中国、モンゴルとの貿易も含めての経済力が背景にあった。

しかし、その浄土思想がダイレクトに「平和希求」といえるかどうかは簡単にはいえない。

それはいいとしても、

マルコ・ポーロは現在、東洋史上で実在が疑われている人物です。『東方見聞録』なる書籍もいまとなっては疑問です。たしかにヴェネチアにおいて同名の人物は実在が確認されています。


しかし、他の文章にはマルコ・ポーロなる人物は一切登場しない。元朝(大元ウルス)側の文章にも、『集史』にも出てきません。これほど大規模な旅をしていて、伝聞が多いながら、かなり事象の正確な記述をしている人物で、しかもVIPにも会っている。ところが他の文献には書かれていない。

そこで彼のことを、「何人かの行動を、ひとりの人物の行動としてまとめた」と考えるのは筋が通っているでしょう。イブン・バトゥータのケースと同じです。

また実際、『東方見聞録』には異本が各種存在するのです。
(いま平凡社、東洋文庫版が手元にありますが、そのへんはどうなっているのかあとで確認してみます)


そのうえ、「大航海時代」などという欧州中心史観をわざわざ持ち出すこともないでしょう。航海時代はその前にインド洋でさんざん行なわれていて、それが有名な鄭和でいったん終了をみたというのが「定説」です。

さらに、かりに「大航海時代」、という表現を認めたとしても、コロンブスはカーンに会おうとして航海をはじめたのであって(『コロンブス航海記』の冒頭をご覧ください)、ジパングを目指したというと不正確です。

この辺の時代のことは、このブログでもたまに書いてきたので、もう個々に指摘しません。最近刊行の東洋史、日本史の一般書籍に普通に扱われている内容です。
念のため修正しておきます。




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