ポニョと崖の上のブリュンヒルデ Ponyo and Brynhildr on the cliff

宮崎駿さんの新作、『崖の上のポニョ』。


この、「ポニョ」と宗介に名づけられる前のポニョの名はブリュンヒルデです。ブリュンヒルデといえば北欧神話、そしてワーグナーのオペラ(『リング』)の登場人物ですね。女性の戦士です。
実際、映画中この名前が与えられたとき、新日本フィルが演奏するワーグナー調の映画音楽が数分間流れます。


宮崎さんが書いているように、まずこの映画は人魚姫の物語でしょう。そこから「キリスト教色を払拭」(宮崎)とあります。素材や人間関係としては北方ヨーロッパの枠組みを借りながら、しかし、そこにポニョの多数の妹たち(あのピンクの小さな小さな魚たちです!)を導きいれることで、神道的、あるいはもう少し大雑把に書けば東アジアのアニミズムの世界を造ります。


湿潤な気候を背景にし魚の種類も豊富な世界です。また人も船を修理しつつ漁を続けます。(日本海の一都市?)。


この人魚姫役のところは、ユング的「母性」とも呼べそうですが、彼女こそがポニョを、魚や半魚人ではなく、人間であることを認めるのです。画像はひたすら色味が美しいのですが、「ストーリー的」にはやや難解かもしれません。
それは、女神的な存在がストーリーの中に出てきていながら、描かれている世界は「神道的」だから、やや矛盾していると感じられるからでしょう。



トキ、という人物が、実は宮崎さんの「母親」像であるということが、NHKのドキュメンタリー番組で明かされていました。本当にそうなのでしょうか。
このトキという人物は、映画のなかでそれほど目立つわけではありません。他の明るいおばあちゃんたち(またここでもハイジ同様、歩けないのに立ってしまう)のほうが惹きつける力は強いでしょう。

そのことが余計に、宮崎さんの「告白」を少なくとも自分には信じさせるのです。作家は一般に自分にとって私的な意味で本当に大事なことはしばしば隠されたりボカされるものですから。

宮崎駿さんの他の作品同様に、いろいろな思想的アイデアがそれとはわからない形で提示されています。それは近代批判などというものではなく、もっと大きな西欧文明への疑問でもあるのでしょう。アニマを提示するアニメーションというのは最適なメディアではないでしょうか。



(追記)
この映画は、自分にとっては実は「やや」ではなく、「きわめて」難解でした。その理由は、宮崎駿さんが描きたいことを苦しみつつも存分に描ききったことにあると思います。自分が妙に「大人」なので、理解できないのだと思われます。ということはここには感じたり考えたりすることが山のようにあるということでしょう! 偉大な作品、ということだと個人的には言えるのでしょう。

ブリュンヒルデとポニョのアイデアの近さは、すでにあちこちで指摘されています。病を治癒する力を持つことや、世界を救う能力があることですね。少し安易すぎる類比なので書かなかったのですが、一応記しておきます(2008年8月28日)。






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