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zoom RSS 【書評】ロナルド・トビ、『「鎖国」という外交』

<<   作成日時 : 2008/09/29 02:16   >>

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鎖国は、「日本史」なかでの一大テーマであり、また「島国」を代表するイデオロギーとしても扱われてきた。しかし、現在の「日本地域史」は「鎖国史観」から脱しつつある。その中でのかなり過激な一冊であるといえそうだ。


著者ロナルド・トビRonald Tobyは、「鎖国」真っ最中に、なぜ朝鮮や琉球から通信使という形で「日本」に使節が訪れているかに疑問をもつ。そこから彼は、江戸幕府には従来考えられているよりは大きな対外方針があったのではないか、と考えるようになったという。

そしてこの本のなかでは朝鮮通信使の位置づけを丹念にたどりながら(とくに第5章)、江戸幕府の総合的な外交政策と、幕府をとりまくイメージの変遷をとりあげる。


簡潔にいえば、鎖国という考え方は相当に修正されるほうがいい、ということだろう。

たとえば、幕府は4つの外交ルートをもっていた。

@ 長崎奉行を通じての、中国(清)と、オランダ(東インド会社)ルート。前者は唐人屋敷、後者は出島。
A 薩摩の島津氏を通じての、琉球王国ルート。
B 松前氏を通じての、蝦夷ルート。これはロシアとも関係する。
C 対馬の宗氏を通じての、朝鮮ルート。

いわゆる「4つの口」である。これについてはずいぶん知られているとも思う。

とくにトビはこのうちCに視線を注ぐ。とくに、江戸幕府は、「国内対策上」朝鮮通信使を呼び、家光以下が権勢を高める必要があったと書く。


歴史を海から見るか、陸から見るか、という議論のあとに、結局両方から見ることが必要だろうという至極まっとうな歴史が書かれていることは、現在の交易中心国家としての日本の位置づけとも関連するだろう。また、大陸との関係のなかで、幕府の外交戦略が練られていたこともこれからさらに考えられ、調べられるべきことかもしれない。

もっといえば、江戸期にはここで言われる「鎖国史観」だけではなく、「薩長中心史観」がまとわりつき、さらに、「江戸=現代史観」が江戸期をさらに複雑なものにしているのではないだろうか?


客観的な歴史などかつて存在したためしはないし、またこれからもしないだろうが、広範囲な視野と偏向に気がつく知性をともなった歴史は書かれうるともいえる。そんな一例がこの本かもしれない。

データや図版が数多く、とくに民間が作成した地図や、『朝鮮人来朝図』、そしてやや中途半端な印象を与えてしまう富士山のイコノロジーなど、江戸期の表象を追うという作品とも読める。

日本と韓半島の関係について、一気に通観した「おわりに」の部分だけでも価値があるのではないか。経済と政治、美術を総合的にみることができるところまで江戸期の歴史研究は来ているということだろう。

全集 日本の歴史 9 「鎖国」という外交
小学館
ロナルド トビ

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