なぜ中東では紛争が多いのか? After Not Truce But Cease Fire,Gaza

中東地域ではどうして紛争が多いのでしょうか? 素朴な疑問だけに本質的な論点をついている問いなのではないでしょうか。

非力を承知でいくつかの理由を考えてみましょう。



当たり前のことですが、中東地域の人たちが争い好きであるという証拠はありません。事実、オスマントルコ帝国の時代には長期の和平状態が訪れていました。

では、なぜか?

まず、19世紀をつらぬく国民国家の作成過程のなかで、ヨーロッパの国々が植民地を形作りました。
その際、部族や民族の意識を覚醒させたのです。そして「民族」のゆるい境界とはかかわりなく国境が引かれました。
たとえば現イラクは、よく知られているようにスンニ派、シーア派、それからまったく異なる概念のクルド人というセグメントからできあがっています。クルド人はイラクだけではなく、トルコ領その他にまたがって居住しています。これが1つめの理由でしょう。


そこに石油を中心とした資源の要素がかかわります。
欧米や日本は石油確保のために、この中東地域に関与しようと試みましす。さまざまな俳優actorがかかわる演劇stageが出来上がります。利害集団がとても多いのです。シナリオを描きにくいのです。ハッピーエンドを考えても上演がむずかしい。



また、イスラーム内部の対立もあるでしょう。
穏健なのがイスラームですが、ワッハーブ派のように過激な思想をもつ一派もいます。また権力闘争のなかで国内の力がそがれていた面も見逃せません。エジプトやパキスタンを考えるといいかもしれません。


オスマン帝国のようなガバナンスのスタイルであれば、民族紛争は起きなかったでしょう。しかし近代化はそれを許さないのです。国民国家の意識や民族意識を植え付けます。これが近代化ですし、近代化とは国民国家の意識のことでもあると言えます。そのなかで、国家意識や国歌、国民の意識、国民文学、マス・メディアなどが誕生したのはよく知られているでしょう。


そしてイスラエルという国家の建設も理由でしょう。ファシズムによる大量虐殺、ジェノサイドをベースにして、ユダヤ人国家が国連の支援のもとに造られました(1948年から第一次中東戦争のころ)。このことはアラブ系とユダヤ系の激しい対立を生みました。いわゆるパレスティナ問題です。イスラエル誕生以前の対立とあきらかに質的な転換があったといえます(いまはこの地域の問題を単純化して説明しようとしています)。

さて、
こう考えると、アフリカの貧困と理由が重なります。ただアフリカ、とくにサハラ沙漠以南Sub-Saharaは、上記の国民国家の問題を背景に、教育の失敗、政治家の腐敗、民主制の未発達という3つの要素がスパイラル状の悪循環をつくっています(たとえば、コンゴ、ジンバブエ)。アラブ地域の政治は機能しています。


ラテンアメリカでは中東のような紛争はありません。なぜでしょうか?


資源がないからでしょう。先進国の利害がかかわらず、ブラジルを除けば打ち捨てられているともいえます。しばしば忘れられてしまうのです。宗教的面では、カトリックと現地の宗教が交じり合い、安定しています。言語的にスペイン語で統一しているのは安定への大きな要素でしょう。これには500年がかかっているのですが。


国家意識、資源、宗教という3つの要素、それらがが相乗的に作用し、中東の紛争(戦争)が起きています。何度も停戦や休戦が誓われ、合意が形成され、何度もそれが破られました。残念ながら問題解決には妙案はないでしょう。しかし日本政府や日本人、日本地域も中東の利害の当事者です。石油、そして水がこれから重要であろうということです。海水の淡水化だけではなく、将来の水の輸出ということにもかかわるでしょう。

オスマン帝国500年の平和 (興亡の世界史)
講談社
林 佳世子


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参考 :オスマン帝国の統治、中央集権の機能について。長期にわたるオスマン帝国を見事に見通した一巻です!!
いまさら、帝国時代に戻そうとすることは出来ないですし、百害あって一利なしだと個人的には思われます。しかし、帝国時代の社会のアーキテクチャーは多いに参考になるでしょう。




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この記事へのコメント

中田
2009年01月21日 08:39
はじめまして、こんにちは。いつもブログを読んでいます。


一つ質問があります。中東地域の人達は争い好きではないとおっしゃいましたが、宗教的にはジハード(聖戦)という概念がありますよね?
それが争いの原因の一要因になっているということはないのでしょうか?
田中公一朗
2009年01月21日 09:24
はじめまして。読んでいただいて、ほんとうにありがとうございます。感謝します――いま本文の字句を修正しました。
ジハードが争いの原因になっているのではないか?ということですが、ほとんど「ない」と言っていいと思います。

イスラームはいつも戦いのことを考えている、好戦的な宗教といった誤ったイメージが広がっています。
ムスリムのよる侵略戦争というのはとくに多くはありません。ジハード自身、防衛のための戦いという意味が強いのです。『コーラン』に出てきます。

では紛争はできるだけ避けるかというと、そうとも言えません。とくに19世紀以降、欧米による植民地支配以降ですね。また現在のイランなどは好戦的としか見えません。穏健派もいるのですが、目立たない。
また現在の「世界史」というのはいまだヨーロッパから見た視点で書かれていますから、イスラームは戦いが好きだ、というイメージで書きがちでしょう。それが広がっている面もある。(続きます)。
田中公一朗
2009年01月21日 09:27
しかし少数派とはいえ、ジハードを大幅に拡大して考えているムスリムもいます。邪悪なことを考えていると個人的には思います。

歯切れが悪いレスポンスですが、イスラームもいろいろである、そして大勢は戦うために生きているわけではない。でもヨーロッパに対しては、植民地化され攻撃された、という意識がある、ということでしょうか。現在のアメリカに対してもそう考えている層がいると思います。

すぐには出来ませんが、ジハードに関して書くつもりです。自分も明確にしたいのです。『コーラン』を読んだのは20年も前。アラビア語も大学時代にやったのですがすべて忘れています。

ジハードについて、wikiには詳しくでていますが、wikiに特有の「中立」的表現でわかりにくくなっています。
中田
2009年01月21日 23:47
ジハードについてヨーロッパよりの考え方によって、中東地域の人達は争い好き、というイメージを自分は持っていたかもしれません。
参考になりました、ありがとうございます。

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