【書評】野町 啓 『学術都市アレクサンドリア』 Alex!

アレキサンドリアといえば、図書館。そしてアレクサンダー大王です。まえから興味はあったのですが、なかなか移動中に読めるような手ごろな本がありませんでした。日本での研究も手薄らしい。そこに、この本が先月に出ました。

ひじょうに簡潔で明快な記述のなかに、この地域で起こったことを集約させた、驚異的な本です。

いくつか内容的なことをピックアップすると、


*プトレマイオスとアレキサンダーは「まぶだち」で、ともにアリストテレスの講義を受けていた。これは有名ですね。

*アレキサンダーが東にマケドニア軍として攻め込んでゆくときに、征服した土地の植物や動物を師であるアリストテレスに逐一送った。それが『動物誌』などに結実する。

*そのアリストテレスが講義をしていたのがギュムナシオン。英語から流用された現在の日本語でいえばジム。しかしそこは、<精神>と<身体>の両方を鍛える場であり、そういう意味で哲学、倫理、弁論術なども重要な位置づけを与えられていた(フーコー的な主題)。

*コスモポリタン的な都市ともいえるアレキサンドリア。これはプトレマイオス1世が、学問好きであったことや、「メセナ」の伝統が復活したことによる(p.54)。コスモポリタンの起源。

*アビ・ヴァールブルグは、アレクサンドリアをアテナイの学芸の再生と捉えていた。それはイタリアのルネサンスとも関係付けられ、また「ヴァールブルグ文庫」がメセナとして機能した。カッシーラー、パノフスキー、ラインハルトなどの学者を支える。

*ニーチェとアレクサンドリアの関係。



全体として文献学の位置づけがいかに重要なのかがわかってくるアプローチになっています。現在の直下に、過去の膨大な文化的堆積がある。そのことの重さがわかってきます。

本書の最後は哲学都市とフィロンの関係。このあたりもおもしろく、当時のユダヤ人への差別の実態なども語られます。丁寧な文献案内と、年譜がついて250ページ。(原本タイトルは『謎の都市アレキサンドリア』。文献案内は書き改められています)。

これはもう、読んでください!!



となると次に気になるのが、アレキサンダー(アレクサンドロス)大王です。

たまたま同じく講談社より、



こちらはうって変わって、戦史面からみたアレキサンドロス大王です。かなり専門的ですが、膨大で、怪しげなものも多い史料批判をしながらの知的な作業です。図表が多いのも特徴です。

となると、アッリアノノスの『アレキサンドロス大王東征記』(岩波文庫、上下巻)を読みたくなります。大牟田章さんの文字通り労作。品切れになっても困るので入手しました。

これはまた読んでからにします。少し先になるでしょうが。



もうひとつ、『プルタルコス英雄伝』。ローマ史研究のアルファでありオメガ。この本は知られているように、ギリシャとローマの「偉人」をセットにして記述しているので、マケドニアのアレキサンドロスも入っているというわけ。

岩波文庫では入手しにくい(こちらでは『プルターク英雄伝』と表記)ので、ちくま学芸文庫版だと、3巻のうちの(中)に入っています。この文庫版では100ページほどが割かれています。

プルタルコス英雄伝〈中〉 (ちくま学芸文庫)
筑摩書房
プルタルコス


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