昭和天皇と神々(『昭和天皇』、書評) War,Gods,and Nation

昭和天皇というと、「あ、そ」と、言う「おじいちゃん」という印象しかないのがふつうでしょう。


しかし、実際には若いころは統帥権をもち、戦争遂行者として市民から絶大な支持を得ていました。
白馬、「白雪」号に乗り、皇居の正面鉄橋、いわゆる二重橋にさっそうと現れるのです。
そして、人々はそれを見て、万歳を叫び、感泣したのです(1938年、本書では、p.116など)。


では、そんな昭和天皇は、いったいなにを心のよすがとし、またどんなことを日々考えていたのでしょうか?


この原武史さんの本では、昭和天皇はまず三種の神器をもっとも重要視し、そしてその次に国民のことを考えていた、といいます。


これはおそらくそうでしょう。
昭和天皇にとっては、天皇そのものは「神」ではないが、神の子孫であることは絶対に死守すべきことだからです。


だからこそ、さまざまな祭祀を宮中で行っていたのです。たとえば、11月3日は、もともとは明治天皇の誕生日です。それが戦後「文化の日」と呼ばれました。春分や秋分の日は、春(秋)季皇霊祭、という名前の祭り(祭祀)でした。


この本は、昭和天皇の内面ではどういうことが起きていたかを時間的に追っています。


生物学に熱中することや、皇后との関係の悪化、兄弟との対立。(現在、皇太子などの間で報じられているような対立を思わず連想)。



こういう家族関係や結婚、趣味的なことを中心にしながら、そこに盧溝橋事件などの歴史的なことを織り交ぜてゆきます。



祭りごとと、『創られた伝統』(ギデンズ)がとくにポイントでしょう。昭和天皇の日々を明らかにするなかで、国民国家の創生・拡充過程と、「個人」の信仰が国家神道にさらに展化してゆくことがあきらかになってゆきます。


いたずらにこの時代を否定しても肯定をしても意味がなく、まずはどういうことがあったのか、どうしてあのような戦争になったのかを、さまざまな視点から明らかにしてゆくべきでしょう。その点では左派も右派も、歴史家がいままでは回避していたテーマであったともいえそうです。



http://mainichi.jp/enta/book/hondana/archive/news/2008/02/20080217ddm015070116000c.html
藤森照信さんの書評。


http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20080218bk07.htm
こちらは讀賣新聞の書評。


ここからビックスの本(『昭和天皇』)や、『昭和天皇独白録』などへ進んでゆくのもいいかもしれません。「日本史」の知識がほとんどなくても充分リーダブルでしょう。


昭和天皇 (岩波新書 新赤版 1111)

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