イヴ・サン=ローランの創造と不安(追悼) YSL, Creation and Anxiety

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イヴ・サン=ローランYves Saint Laurentにはつねに不安があって、それが創造を書き立てるダイナモでもあったのかもしれません。
彼自身もそのことについては、いろいろな場所で過去にあけすけに語っていました。それはほぼ「真実」であったと考えてよさそうです。

業績的なことはwikipediaを見ていただくとして(日本語のほうが英語やフランス語より現時点では詳しい)、ちょっと視点を変えて書いてみます。(画像は本日のヘラルドトリビューン紙一面)



イヴ・サン=ローラン、ここではYSLと表記しましょう。これが彼のロゴですから。

YSLは、5歳ごろからデザイン画を描きはじめています。そしてデザイナーになることを考えていたようです。
そのチャンスは実に早く来ます。

紹介されてディオールChristian Diorに会うのです。YSLのデッサンを見たディオールは、「自分の後は、君がディオールを継ぐのだ」と言い、実際その数日後にディオールは急死してしまいます(1957年)。

(当時のディオールは、Aラインを筆頭にして、戦後のファッション界のトレンドを作っていました)。


21歳にして、ディオールのチーフデザイナーになったYSLは、その後独立。モンドリアンルック、サファリ・ルックやタキスィードなどさまざまなアイデアを次々と披露します。女性にドレス以外の選択肢をたくさん送った、ということでしょう。パンタロン(いまで言うパンツ)などを一般化させたのもYSLです。トレンチコートもそうでしょう。映画での衣装ということも忘れてはなりません。



年2回あるコレクションは、一般的にデザイナーにとっては本当に厳しいものです。締め切りがはっきりあり、そこに最低何十点かの「新しい」デザインの服を造っておかなくてはならないのですから。ごく稀に延期になったりします。作品数がいやに少ないときもあります。
さらにオートクチュールとプレタポルテがあれば、年間4本のコレクションをすることになります。このプレッシャーはとても強い。
(かつて自分はファッション評論家を目指したことがあり、このへんの事情は多少知っています。当時はファッション評論の需要というのはなかったんですね。いまは多少違うようですが)。

そして、ビジネス展開も考える必要があり、優良顧客用のショウもメゾンとして定期的に行う。


コレクションのために、孤独にデッサンを描く。そして軍隊や、アメリカやアートから発想を得る。


幸い、彼には支持者が多く、その筆頭がパートナーのピエール・ベルジェPierre Bergéでした。物心両面で彼を支えていたといえます。カトリーヌ・ドヌーヴもその1人でしょう。


彼は縫う技術はほとんど持っていなかったと記憶しています。デッサンが抜群であった。そして、それで充分だったのです。ただそれは描けるかどうかが描いてみないとわからない。その不安が大きかったのです。




個人的に印象に残っているのは、色使いですね。
本当に発色がよく、いい生地に鮮明な色味が出ていました。ミロやマティスの影響もここにはあると言われています。たぶん生地作りに相当にかかわっていたはずです。


それとカッティングのよさ。縫製もそうですが、実に「滑らかで鋭角的な」という矛盾したようなラインが必ず出ていました。これは優秀なパターンナーがいたこともあるでしょうが、YSLの細部と全体への目配りなのだと思います。

結局かれは、2002年に引退してしまいます。あとを継いだのはトム・フォードなのですが、上記のベルジェによれば彼には才能がなかったとのこと。YSLと比べてしまえば、そう思えるでしょうし、おそらく誰もYSLのような服を造ることはできますまい。真似すら難しいでしょう。

音楽を愛し、文学を愛し(プルーストの熱狂的なファンでした)、絵画収集家でもあったYSL。

そんなYSL、イヴ・サン=ローラン。享年71歳。アルジェリア生まれ。パリのアパルトマンで死去。


以下、参考文献的なもの:
CNNのYSLへのインタヴュー。

本日付けのヘラルド・トリビューン紙は2ページめで、ほぼ全面を使って解説と回顧記事。
http://www.iht.com/articles/2008/06/02/europe/menkes.php
これは名記者、スージー・メンケスが書いています。

http://www.ft.com/cms/s/0/3e6ee7d6-30d0-11dd-bc93-000077b07658.html?nclick_check=1
フィナンシャル・タイムス紙は、社説で追悼。



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